起業するなら個人事業?あるいは法人?

消費税の免税を受けるため・・・

「新たに起業するなら個人事業ではじめるのがよい!だって消費税免税の恩恵を2回うけられるのだから・・」起業を目指している方がよく耳にする定番のアドバイスですね。

ご存じの方も多いかと思いますが、消費税を納める義務が生ずるのは2年前の消費税絡みの売上が1,000万円を超えた場合です。言い方を変えると、今年消費税の納税義務があるかどうかは、2年前の売上が1,000万円を超えているか否かで決まる、ということですね。
したがって、起業した最初の2年間は少なくとも、2年前の売上がない(というより、2年前は起業していない)ため、消費税は免税です。個人事業で起業した場合には、法人成りを含めて合計4年間は最低でも消費税の納税義務は免れるという恩恵が受けられます(厳密には特定期間の問題があるため特殊論点がありますが、その点は割愛します)。

でも、消費税を納税しなくてよいという税金の問題を理由に個人事業主で起業するのが本当に正解なのでしょうか?

法人成りの際の資本金はどこから工面する?

起業したあなたの得意先があなたに法人成りを求めてきたとします。得意先が大手企業である場合は、「ウチは法人でないと積極的な取引ができないんだよね・・・」といった囁きが耳に入ってくることがあります。あるいは「法人なら取引を検討してもいいんだけどね。」そのとき、あなたはどうやって法人成りしますか?資本金はいくらにしますか?

さすがに資本金50万円で法人成りはしませんよね?得意先があなたに会社組織になることを求めているのであれば、相手は資本の厚い取引先としてのあなたに信用を置きたいと考えているはずです。そうであれば、得意先の顔色を伺いながらどの程度の資本金の会社組織にするべきかを検討する必要が生じます。仮に検討の結果、資本金200万円で法人成りをすると決断をしたとします。その場合の200万円の資本金はどこから工面しますか?

個人事業主として起業して、2年後に得意先が法人成りを求めてきて200万円の資金が必要となりました。生活費に消えたキャッシュもあるため、貯蓄で200万円の資金はまだ確保できていません。ではどうする?銀行に借りるのか?「法人成りしたいので融資をお願いします。」と銀行に依頼しても貸してくれません。

銀行が200万円をあなたに貸し付けて、その資金を資本金として法人設立したとしたら、その法人の出資者は誰ですか?あなたではなく銀行です。つまりその法人の出資者すなわち所有者は銀行です。こんなバカげた取引を銀行がするはずがありません。会社組織にするために必要な資本金は、自分で稼がなければならないのです。

初めから法人で起業する

起業する方で次のようなビジネススキームをお考えの方は、起業の初めから法人組織を作ることをお勧めします。

◎売上先・・・・・大企業
◎仕入先・・・・・中小企業

大企業は取引先すなわちあなたに法人組織であることを求めてくるケースが少なくありません。法人であることによって得意先を広げることができることもあります。ご自身が起業する際のビジネススキームをよく斟酌して、初めから法人組織で起業したほうがメリットがあるのかを見極めてください。
起業のために貯めてきた自己資金を資本金に充当して最初から法人で起業してみませんか? 法人で起業した場合には、消費税の免税の恩恵は1回しか受けられません。しかし、優良な得意先と取引ができるという経営上のメリットは確保できるかもしれません。

税金の観点からのみの偏った起業アドバイスは近視眼的です。