設備投資と節税

平成28年度税制改正大綱が公表

ここ数年は時代の変化に対応した細かい改正が多く、実務レベルへの作業の落とし込みが大変です。さて、今回の改正で設備投資を頻繁に行う中小企業にとっては、次の2つの論点を理解しておく必要があると思います。

①:生産性向上設備投資促進税制の廃止(国税)
②:償却資産税の減税制度の新設(地方税)

既に適用を受けている法人も多いと思いますが、生産性が対旧モデル1%以上(年平均)向上している新品の機械装置等を購入・利用した場合には、《取得価額の5%の税額控除》または《取得価額を100%償却》できるという制度です。

3,000万円の対象となる機械装置を購入した場合に、100%減価償却ができれば3,000万円全額が経費計上できます。この制度を利用できない場合には、例えば定率法10年(償却率0.200)で償却するとなると3,000万円×0.200=600万円しか経費にできません。
実に2,400万円の経費計上に差が出てしまい、実効税率を30%と仮定すると2,400万円×30%=720万円も納税額に差が出てしまいます。

さて、この100%償却の特例は平成28年3月31日までに購入利用開始した機械装置等について適用できます。平成28年4月1日~平成29年3月31日までについては、《取得価額×5%の税額控除》または《取得価額×50%の特別償却》のいずれかを選択できます。

メリットが半分になってしまうので平成28年3月31日までに利用したいものですが、制度自体が平成29年3月31日で廃止されますので、最悪50%の特別償却の適用は受けたいですね。弊所のクライアント様でもこの制度を多く利用しており、非常に嬉しい制度だったのですが、廃止されます。
個人的には延長してほしかった制度です。廃止するほど景気はよくなっていないと思うのですが、改正のバックグラウンドがわからないので何とも言えません。

新しく創設される制度です。償却資産税という地方税の論点です。1台160万円以上の固定資産で生産性向上年平均1%以上の要件などを満たすものを購入利用した場合に、償却資産税が3年間半額となる制度だそうです。300万円の機械を購入した場合、従来は300万円×1.4%=4.2万円の税金納付だったものが半額の2.1万円になります。税金を直接減らせるので分かりやすい制度です。

国税で廃止して、地方税で新設する・・・。このあたりの税調の意図は分かりませんが、設備投資を巡るこの2つの制度、上手に使って節税したいものです。