<2>加工業が粗利益率を向上させるためのチェックリスト

目次

  • 在庫数値を概算で毎月の帳簿に反映する
  • 概算在庫額を反映する方法とは?
在庫の把握は、粗利益の正確な算出に直結します。しかしながら、特に中小零細企業においては、在庫管理が煩雑で手間がかかるという課題があります。今回は、販売管理ソフトが導入できない中小企業でも実践できる、在庫金額を概算で帳簿に反映する方法について解説します。

在庫数値を概算で毎月の帳簿に反映する

在庫数値
販売管理ソフトを上手に活用できれば、月末の在庫金額が分かりますので、毎月の帳簿に適切な在庫額を記載できます。

適正な在庫額が分かると、毎月の適正な自社の原価を計算できていることになります。それはつまり毎月の粗利益が正確に把握されていることになります。しかし、販売管理ソフトを導入して粗利管理をしっかりできる中小零細企業は実のところ少ないです。

ソフトを導入できないのであれば実地棚卸を毎月実施すればよいのです。しかし当然ですが、中小零細企業に毎月在庫をカウントする時間的余裕はありません。年に1回の決算時に棚卸をするので精一杯で、それ以外に在庫をカウントすることなどできないでしょう。他方で、中小零細企業でも月次決算は行っているケースはよくあります。しかしその月次決算書には当月の在庫金額は反映されていないことがほとんどです。

販売管理ソフトは導入できない。毎月月末に実地棚卸をする余裕もない。試算表には適正な在庫額が計上されていないので、その月の粗利益額もいいかげんな数値です。このような適切な粗利益額が反映されていない毎月の試算表になんの意味があるのでしょうか。

概算在庫額を反映する方法とは?

そうした時は、前期末の決算書から計算できる粗利益率を使って、毎月の在庫金額を概算で計上していく方法をお勧めします。前期実績の粗利益率で毎月の粗利益額を概算で計算してみるのです。一定の業歴のある企業では粗利益率がある一定の幅におさまっていることが多いです。

この方法を使って概算で在庫額を帳簿に記録してみてください。そのうえで、たとえば「2か月後に販売する予定の製品で使う材料を今月大量に300万円仕入れた」といった個別の情報を帳簿に反映させてください。

今の例だと、最初に300万円を在庫として経理処理をしてください。次に300万円の在庫を除いて、前期粗利益率で概算の追加在庫を計算してください。こうした作業を毎月行うことで実際の在庫に近い数値を帳簿に反映させることができます。
販売管理ソフトがない、棚卸の時間も確保できない。そんな状況でも、工夫次第で「おおよその在庫」と「信頼できる粗利益」に近づくことが可能です。月次の数字に信頼性があれば、経営判断もブレなくなります。ぜひ一度、試してみてください。